地サイダー界のパワースポット?!

あけましておめでとうございます。


新年一発目からマニアックなネタですみません。
ちょっと気になるスポットがあったので、帰省ついでに行ってみました。


場所は福島県福島市*1
一面に果樹園が並ぶ農道の脇にたたずむ小屋と看板。


つい先日、テレ朝のナニコレ珍百景*2で取り上げられたので見覚えのある方もいるのでは?


ここ最近某地サイダー大好き集団の陰謀に嵌められた私としてはどうしても気になるスポット。
車を止めていざ調査。(広い駐車スペースがあります)


小屋の中にはコインロッカーと、その脇に簡単な棚*3
農道沿いの至る所にある、野菜や果物の無人販売所と見た目は変わりません。
ただ看板には「各地の珍サイダー」。
そして小屋を隠すように張られた大きな黒い布*4。怪しさ満点。


その大きな布に隠されたロッカーの中には、


写真が半分切れてしまいましたが、
6段×3列のロッカーの中にはすべてサイダーが!!
並んでいたものだけで全部で15種類ありました。


気になるそのラインナップを。

沖縄・伊江島物産「ホワイトソーダ

沖縄・伊江島物産「黒糖コーラ」。黒糖入り。

沖縄・伊江島物産「ピンクドラゴンソーダ」。ドラゴンフルーツ果汁入り。

沖縄・伊江島物産「グリーンマースソーダ」。シークワーサー果汁入り。

佐賀・友桝飲料「フルーラ ラフランス」

佐賀・友桝飲料「フルーラ マンゴー」

佐賀・天山酒造/七田酒類販売「103<テンザン>サイダー」。瓶のデザインがカッコいい!

佐賀・友桝飲料「謹製サイダァ」

佐賀・友桝飲料「スワンガラナ

鹿児島・湯砂菜企画「指宿温泉サイダー」

佐賀・友桝飲料「湯あがり堂 蜂蜜れもん」

佐賀・友桝飲料「湯あがり堂サイダー」

香川・谷本商会「小豆島 オリーブサイダー」

長崎・長崎県酒販「バンザイサイダー」

そして極めつけは、
佐賀・友桝飲料「かすていらサイダー」。カステラ入り・・・?


以上15品。西日本のものが中心のようです。
しかしこれだけの品揃え、そして設置場所の謎めかしさといい、


これはもはや「地サイダー界のパワースポット」と呼んでもいいような??


価格は2本(小さいのは3本)一組で300〜500円。
コインロッカー式なので100円硬貨しか使えないのと、近くにお店はないので、買いに行かれる方はご注意を。


さて、この中から「かすていらサイダー」をチョイスしてきたのだが、味はどうなのか・・・。


1:
2: 2010年12月8日放送。
3: 今日は何もありませんでしたが、料金箱があったので普段は果物などを置いているのかも。
4: 冷蔵機能がないから、日除けのためだとか。(テレ朝HPより)

2010年を振り返る

なんだかんだあった2010年ももうおしまい。

少し今年を振り返ってみようと思うの巻。


1月→院試に合格。研究室に通いつつ研究の第一歩を踏み出す。

2月→いきなり学会で発表させられる。でもそれが契機で、救急分析の面白さに魅かれる。

3月→住み慣れた地元を離れて再び新潟へ。

4月→後輩も入り本格的に院生活スタート。いきなり学生実習のアシスタントでひーひー言わされる。

5月→教授退官祝賀会のスタッフでひーひー言わされる。

6月→研究にも慣れどんどん進めていく時期。合間に東京の学会と郡山のオケ。この時期から中学生の吹奏楽指導始まる。

7月→一つのデータの間違いに気付き、1ヶ月間かかった作業をもう一度やり直してた頃。。。東京のシンポジウムに顔を出す。この時期からジムに通い始める。

8月→京都の大学に短期留学。一流の講師のもと、1週間みっちり地理学を学んで帰る。(その前の予習も尋常じゃなくキツかった)

9月→夏休みの旅行で四国・瀬戸内へ。しまなみ海道チャリ縦断はきつかった。。。

10月→GIS勉強会や学会で全国各地を飛び回っていた時期。この月だけでたくさんの研究仲間に出会えました。

11月→教室再編の動きが見え始め、自分に対しても選択を迫られ始める。かなり精神的に不安定で、おまけにプロジェクトの解析計画を1から立て直しで、研究は思い通り進まず。合間にまた郡山のオケと中学生の指導。

12月→先月より体調は良いがまだ悩みは絶えず。教室の崩壊も目の前で、そろそろ結論を出さないといけない時期になってきている。


という感じでした。

まず、外に出て勉強する機会がものすごくたくさんあって、たくさんの人に出会うことができたというのが何よりの収穫でした。
各地の大学の先生や学生さん、企業で働く研究者などなど。
医療に全く関係ない人がほとんどというのも面白かった。
そのままの道、普通の臨床医としての道を歩んでいたら絶対に出会えなかった方たちに会えたことに感謝。

やはり、twitterを始めてからこの出会いが加速し密になった事は特筆すべき。


ただ、教室再編の流れで、新学期に自分がどこにいるかまだ分からない状態なのは、今年中に決着はつかなかった。
自分一人では決着がつかないし、相談しようにも内容がデリケートなので誰にも話することができず。
研究室でだんだん口数が少なくなってきているが、いつか決めないと。


音楽のほうでは、郡山のオケを抜けてからもときどきお手伝いに行き、
しかも中学生の指導も去年と変わらず続行中。このあたりはなかなか充実。
来年は新潟でもどこかに参加したいところだが…。



来年は、もっともっといろんなところに出かけていって、たくさんの人に出会おう。
もっともっといろんな世界の人に会って、知識の幅を広げよう。
そこで得た知識と今ある知識を組み合わせて、何か新しいことを始めよう。

ちょっと早いが、来年の抱負。

読売の「子宮頸がんワクチン失神多発」の記事で不安を覚えた人へ

まずはこの記事。

子宮頸がんワクチンで副作用、失神多発 - 2010年12月28日03時02分 読売新聞

子宮頸(けい)がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。

接種者の大半が思春期の女子で、このワクチン特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。

子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。

この記事を読んで不安を覚え、こんな注射打ちたくない、打たせたくないと思う人がどれだけ多かったことか。
ただ、この記事にはかなり間違いが多く、それで無駄に恐怖感をあおっているだけに感じた。
そこで客観的視点からこの記事を読み解いていく。


まず、「副作用」。
正しい意味は、『医薬品の使用に伴って発現した有害な事象』。
ワクチンではこういう言葉は使わず、「副反応」や「有害事象」という言葉を使う。
「副反応」は、『ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応』、
「有害事象」 は、『薬の使用者に発生した医学的に好ましくない事象。因果関係の有無は問わない。』とある。
(有害事象は間接的・偶発的に薬やワクチンが関係しているものも含まれるので範囲はかなり広い)

これは記者の不勉強なのかそれとも…。


次に、「ワクチン特有の強い痛み」。
子宮頸がんワクチン(日本ではサーバリックス)は筋肉内注射で行う。
よく行われる皮下注射より痛みが強いのは確かだが、
何も筋肉内注射を行うのはこれだけでなくて、B型肝炎ワクチンとか、
海外ではインフルエンザワクチンも筋肉内注射で行うことが薦められているとか。

また、海外のワクチンは免疫原性を高める目的でアジュバントが使用されており、
インフルエンザワクチンでアジュバント添加と非添加のものを比較した研究*1では
副反応として局所の痛みの発生が添加ワクチンでは70%。非添加ワクチンでは42%と、
アジュバント添加のワクチンでは痛みを訴える割合が高いとされている。
輸入物の子宮頸がんワクチンではアジュバントが添加されているが、
やはり他のワクチンにも共通して言えることである。

となると、「ワクチン特有の強い痛み」と言ってしまうと、かなり意味が違ってしまうんじゃないか…。


そして、「気を失う例の多い」。
これはおそらく血管迷走神経反射のことだろう。
これは記事の通り、強い痛みなどのストレス(他にも排泄、腹部疾患など)がきっかけで、自律神経のバランスが崩れて気を失うというもの。男女とも思春期に多い。*2

CDCによると、(こちらはサーバリックスではなく、もう一方のワクチンであるガーダシルだが、)*3
2009年9月末までに約3200万人にガーダシルが接種され、
そのうち有害事象の発生が17,160件で、このうち92%が「軽微な反応」と報告された。
この「軽微な反応」には、刺した部位の痛み、腫れ、頭痛、吐き気、発熱と並んで失神(fainting)が含まれている。
このfaintingは思春期に多く、これがきっかけで転倒してけがをする場合があるので、
それを防ぐ為に接種後15分はその場で様子を見ましょうと記載されている。
これは上記の血管迷走神経反射と考えてよさそうである。


注射はもちろん、採血や献血でもこれは起こりうるもので、
実際にアメリカで10代の若者の献血時に起こった有害事象をまとめた研究*4では、
意識を消失する割合は16〜17歳では0.53%。
一方この記事では40万人中21+2人で、およそ0.0057%。
報告されてないものがあるとしても、100倍の違いはあるので、
とてもじゃないけど、子宮頸がんワクチンで「気を失う例の多い」とは言えない。



まとめると、
・筋肉内注射、アジュバント添加という面から、子宮頸がんワクチン接種は痛いのはどうやら確からしいが、子宮頸がんワクチン特有のものではない。
・気を失うのは血管迷走神経反射によるものだろう。これは他の注射や採血・献血でも同じに(または高頻度に)起こりうるものである。

つまり、子宮頸がんワクチンが特に気を失う例が多い性質のものではないことがわかっていただけただろうか。


思春期の女性に接種するので、痛みだけでなく、痛みや注射自体に対する恐怖感が強い。
そのため接種によりかかるストレスが強く、それが引き金となって血管迷走神経反射が起こりやすい。
なので、この記事にもある通り、
「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」
と言えば済む話ではないか。
この記事を読んで不安を覚え、こんな注射打ちたくない、打たせたくないと思う人がどれだけ多いか想像に難くない。
無駄に恐怖感をあおる記事では、行政の補助によってせっかく普及してきたワクチン接種の流れをまた止めてしまうことになりかねない。

この記事を書いた人から、何か強い悪意を感じるのは私だけだろうか。。。


*1: N Engl J Med 2009; 361:2424-2435
*2: 日本救急医学会・医学用語解説集:迷走神経反射
*3: Centers for Disease Control and Prevention:Reports of Health Concerns Following HPV Vaccination
*4:JAMA. 2008;299(19):2279-2286.

救急車有料化の議論に思う

静岡県で検討されていた「救急車の有料化」を見送る決定がなされた。

>>県市長会は20日、12月定例会議を開き、救急車の有料化を見送ることを決めた。「時期尚早」との慎重論が大勢を占めた。軽度のけがや病気でも救急車を呼ぶケースが後を絶たないとして、県市長会は有料化の可否を検討していた。
消防組織法は、各自治体に消防関連経費の負担を義務づけている。しかし、県市長会は、不急とみられる症状でも救急車を呼ぶ例が多いことを問題視。作業部会で有料化について協議し10月、「救急車を有料化できるよう国に法改正を要望する」との結果をまとめた。これを受け、各市に意見を求めたところ、「救急車を適正に利用している市民にも負担を強いることになる」など、有料化に消極的な意見が目立ったといいう。

27歳、岐路に立つ。

2008年春。私は某大学医学部を卒業、国家試験をパスし、晴れて医師となった。
2年間の臨床研修。前途洋々たるドクター生活が始まったように思われた。私もそう信じていた。

しかし、1年後、最初の一歩は「研修中断」という結果に終わった。

過酷な労働環境、いじめに近いような人間関係に耐えながらの研修により心身に不調をきたし、
研修開始から半年後には動くことすらできない身体になっていた。
今の言い方をすれば、「ブラック」な職場だった。
服薬治療とカウンセリングを重ね、ある程度の回復はしたが、臨床に対するトラウマは強く残り現場に戻ることはできず、結局そのまま職場を辞めた。

医師免許は取ったが、医師としてキャリアを積んで働くことはできない。
字面ではおかしな話だが、研修は義務なのだから仕方がない。
でも他の道なんて何がある?先の人生に暗雲が立ち込める。

そんな中で、とにかく何かしなければ!と、学部時代から興味があった公衆衛生の研究室に入ることを決めた。去年の秋のこと。今春からは大学院生として本格的に研究を始めた。

私が扱っているテーマは、保健医療分野におけるGIS(地理情報システム)の活用。
その中でも今題材としているのは、救急医療システム、そしてインフルエンザ。
平たく言うと、集められたデータを基に地図を描いて、そこから搬送の状況なり、感染の状況を分析していこうという試み。
日本ではまだ発展途上、と言うかやってる人が何人いるのか?ぐらいの超マイナー分野。
私としては好きなことをやっているのでいいのだが。

そんな現在だが、ある重大な岐路に立っている。
救急とインフルエンザ、どちらかを選択しなければならなくなってしまった。
もちろん、学位論文の段階で選ぶ話なのだが、それ以前の問題。
医局再編の波で、今の研究室が事実上分裂することになってしまった。
教員の異動も伴うので、テーマによって私は大学に残るのか外に出るのか、残るとしてもどこの研究室の所属になるのか。

やりたいことをやればいい、と言われる。
確かにそうだし、それが決まればおのずと行き先も決まるはずだ。
私がやりたいのはあくまでも保健医療でのGISの応用。いろんな活用先を広く求めてやっていきたいのである。
しかしそれができる場所はもう残っていない。

さあ、どうするか。

少しでも自分の考えを整理できるよう、自分を見つめられるよう、考えたことを書き記したいと思う。

医療統計学からの視点で、高齢者の相次ぐ所在不明の件に思う。

twitter(同アカウント)の内容に加筆。

百歳以上、新たに所在不明14人 11都道県で計26人
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20100804/Kyodo_OT_CO2010080401000336.html


年金や手当の不正受給云々も問題だけど、
人口動態統計という、重要な政府管轄の統計がこれ程ぞんざいな扱いになっていることに愕然。
しかも死亡届は、出生届に並んで最重要クラスの統計であるのに、この管理がしっかりなされていなかったことに問題を提起したい。

(※人口動態統計:出生、婚姻、離婚、死亡、死産)

ちなみにここでは、すべての件が、
所在不明=既に亡くなっている、と断定されたわけではないが、
その可能性は高いし、まだこれも氷山の一角だと思われるのでそういう仮定で。

私は現在死亡統計を研究に利用しているし、職業柄死亡診断書を書くこともある。
(ちなみに死亡診断書と死亡届はセットで1枚なので、医師の死亡診断なしに死亡届は出せません)

やはり人の死は、非常に重い。
一枚の書類、Excel上の一列のデータであっても十分伝わってくる。

しかし、その死についてのあらゆる情報を解析し、問題を発見し解決して、
各種の病気の予防や健康、更に医療サービスや医療費に関する政策に生かすのが、我々公衆衛生に携わる医師の役目だと思っている。

その根幹である人口動態統計の扱いがこの様であっては、
今の数字では大きな差は出ないだろうが、
もっと大きな数字になるような事態が起これば、その先にある結果や施策にはどうしても歪みが生じるであろう。
その歪みは高齢者のみならず全国民に何らかの影響があるかもしれない。
われわれも研究段階で十分加味するつもりだが、やはり公務員の方々には、消えた高齢者問題、さらには人口動態統計の管理問題の根本的解決を望みたい。

なぜ医学生はGISの世界に飛び込んだ?

私が医学部4年のときの公衆衛生学の講義にて。
もともと私は、病気を相手にする臨床医学というよりも、
一般住民や環境の中で動くという社会医学に興味を持っていたのですが、

そこで現れたのが、GISのお話。
当時の教授が、地図上にインフルエンザの患者数の時間的推移を載せてアニメーションにしたり、
発展途上国の人々の家を、GPSを持って1件1件くまなく回り歩いて描いた地図や、
そこにさまざまな属性を加えて、地図を重ねて、問題を明らかにしていく過程。


小さい頃から暇があれば地図を眺め、当然旅行好きで、
高校時代も歴史そっちのけで地理大好きっ子だった私は、


ビビビっときました。(当時の言い方でいうと)
医療の世界でもこんなアプローチの仕方があるのかと。


その後にあった研究室配属ではもちろん志願して入らせてもらい、
半年ほどGISを使っての仕事をさせてもらいました。
あの時はインフルエンザだったかな?
学部生なのに学会で発表する機会も得ましたし。


そして、その4年後に、私はもう一度この仕事がしたくて、
同じ研究室に舞い戻ってきたのでした。

これが、私とGISとの馴れ初めです。