2012へ向けて。

2011年の振り返りを書き上げる前に2012年の目標を書き上げるとは。。。

大きく3つのテーマに分けてみました。

・あなたのスペシャリティは何ですか?

 2011年は震災や原発事故があり、それにかかわる医療面での課題が数々浮き彫りになった。地方の医療崩壊、被災者・避難者に対する医療資源の供給、放射線被曝に対する健康不安…。私は今までの研究テーマから臨時的に方向を転換し、放射能汚染の現状把握のための線量測定、線量マップの作成、避難者動向の追跡などを行ってきた。個人的にも、生活救援のための情報収集のボランティアや、南相馬での除染プロジェクトに参加してきた。

 間もなく震災から10か月が経つ今、繰り返し自問自答する問いがある。

 「あなたのスペシャリティは何ですか?」

確かに、線量測定や避難者の追跡は、今後の復興や生活再建に必須の事項ではある。しかし、その先に何がある?ここで調べたことは何の役に立つ?いろんな人に繰り返し問われる質問だ。仮にも大学時代は臨床医学を、大学院に入って社会医学を学んできた立場だ。医療・医学の立場で問題に切り込んでいくことが求められていると感じるし、私自身もそれを望んでいる。医療崩壊が深刻な地域の体制再建には何が必要なのか?どう改善すればいいのか?被災者の健康問題で今気を付けるべきことは何か?
 
 2011年は震災にかかわる問題について基礎的な研究を重ねてきた。2012年は次のステップ、ここから出た課題に自らのスペシャリティを武器にして戦っていく段階だと感じている。

 そして、その武器、スペシャリティを磨くことも怠らないで続けていかねばならない。今年一年かけて認定産業医取得を目指す。今求められて職域保健の問題は、生活習慣病メンタルヘルス、労働条件との関わりなど、地域保健の問題と大きく重なるところがある。もちろん勉強することは山ほどあるが、できるだけ多く吸収して自らの糧にしたい。


・軸を複数持つということ。

 2011年、特に震災後ほど、一つの問題に対して一つの軸で考えることの危険性を痛感することはなかった。代表的なものが低線量被曝の問題。除染の必要性、食品・土壌・海洋の汚染、小児や妊婦への影響、避難の必要性、屋外活動制限と子どもの成長発育の問題…など、幾度にもブログやtwitterで議論を繰り返してきたが、一つの問題にとらわれて違う問題にもその条件を適用してしまうという過ちを犯して極論に走ったり議論が跳躍することが何度もあった。当然私もその過ちを何度も犯した。

 物事が違えば、その前提条件が異なるのは当然のこと。同じ事柄でも、年齢差があり、地域差があり、時間差があり、何より個人個人で条件は全く違う。歌詞にもあるが、「育ってきた環境が違うから 好き嫌いは否めない」のである。

 考え方が多様化する中で、自身の中にも考え方の軸を複数持つこと。これはダブルスタンダードということではない。たくさんの条件がある中で「最適解を見つけるため」の複数の軸だ。その軸を自分の中に立てるために、今年も多くの人と出会い、話をする、多くの本を読むといったことを重視したい。


・実現可能性と持続可能性。

 2011年、研究のために書いたプロポーザルが全部で4本。うち2つのプロジェクトが今でも継続中、1つは途中で頓挫、1つはデータ利用の申請中。ここから思い知ったのは、一つのことを立ち上げるエネルギーは莫大で相当骨の折れるものだということ、そして、立ち上げた後でそれを維持することがいかに難しいか。

 0から1にすることと、1から2にすること。数学的にはどちらも1を足せばいいだけの話だが、そのエネルギーは天と地ほどの差がある。それは楽器をやっていた頃から知っていたが、「1を1のまま維持すること」の困難さも大いに実感した。

 いくら理想的な耳あたりのいい提案を出して実行に移しても、それは1年間継続できるのか?3年後は?30年後は?

 今、被災地、特に福島県の再建に求められているのは長期的に持続できるプロジェクトだ。除染にしろ、健康対策にしろ、1回やってハイ終わりでは話にならない。逆にやられた方の戸惑いが大きくなってしまうだけではないか。私は今年も南相馬や相双地区のプロジェクトに参加することになると思う。その中でよく話をするのが、「焦ってもしょうがない、ゆっくりやろう」ということ。これは、実現可能性だけでなく、持続可能性を重要視している。そういう目線での活動ができていければと考えている。


 目標というよりは自らに向けた指針のような感じになってしまったが、一年の計は元日にありということで、今日思ったことを1年間大事にしていきたい。